初のアルバイトは楽しい仕事でした

初めてアルバイトなるものを経験したのは、中学三年生のころになります。今から三十年も前の話でございます。「中学生がアルバイトなんてできるわけないだろう」と言われそうですが、確かに中学生をアルバイトとして雇ってくれる会社はないでしょう。でも、私はやっていたのです。しかも、真夜中に。
なんてことはないのです。私がやっていたアルバイトと言いますのは、父親の仕事です。この当時、父は展示会場の舞台セッティングの会社に勤めておりまして、主に都心のホテルの展示会場での仕事が多かったのです。会社で人員が少ないときには私のような子供でも平気でかり出されておりました。今では考えられませんが。
「明日の夜、青山のホテルで仕事があるんだけど、おまえ行くか?」と父に言われれば、私は小遣いが欲しいので、一も二もなく、「うん、行く」と答えました。このころ、私は高校受験を控えておりましたが、そんなことはなにも考えていませんでしたね。それに、親も親ですね。まあ、私の親にはそういうところがありましたから、別段、私はなにも思いませんでしたが。
それで学校から帰りますと、私は父の運転するトラックに乗り込みまして、会社へと行きます。そこは工芸会社でして、展示会に限らず、あらゆる舞台セッティングを作っています。そこで荷物を積み込み、いざ出発。目的地の青山のホテルに到着したのはだいたい夕方の七時。セッティングが始まるのは夜の九時過ぎですから、それまでは夕食をとったりして時間をつぶすのです。
仕事が始まりますと、職人さんたちはいっせいに舞台を作り始めます。そして、私たちはひたすら荷物をおろす。この単純な作業が延々と五時間ほど続けられるのです。

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